癌治療はチーム医療です。

獣医師だけの頑張りでは成功しません。外科(癌を手術で取り除く)、化学療法(抗癌剤治療)、放射線治療だけでなく、栄養管理(療法)も癌治療の上で、重要な役割を果たします。特に、栄養療法は飼い主さん(ご家族)が主役となり、ご自分の犬ちゃんを治療することに重要な役割を果たすことができます。

  • 癌細胞が成長するのに(転移したり、増殖したり)炭水化物を多く利用します。この炭水化物を消費するとき、癌患者の体から多くのエネルギーが消費されてしまうのです。つまり、炭水化物が多いご飯は癌患者の体にとってよくない、と言えます。ドライフードは炭水化物がものすごく多いので、癌患者には薦められないのです。
  • 炭水化物には複合炭水化物と単純炭水化物とがある。
      複合炭水化物…うどん、そば、ごはん、パスタ 等
      単純炭水化物…ブドウ糖、果糖、砂糖、麦芽糖 等

単純炭水化物は体へ吸収されるとき、エネルギー消費が著しいのでできるだけ与えないようにしましょう。くだものは果糖等が多く入っているので、与えない方がいいです。与えるなら、複合炭水化物を与えるようにしましょう。

脂肪と癌患者(癌細胞は脂肪が嫌い)

  • 正常な細胞は脂肪を酸化して、エネルギーとして利用しています。
  • 脂肪の量よりもタイプが重要。

☆n-3群の多不飽和脂肪酸(善玉脂肪酸)

  • オメガ3脂肪酸ともいう。
  1. 抗腫瘍効果
  2. 悪性腫瘍の転移を抑制
  3. 抗炎症作用
  4. 乳糖値・インスリン値を正常化する → 癌による栄養素の代謝異常の改善

オメガ3脂肪酸は以下に含まれる。

  • サーモンオイル
  • 青魚:サバ、イワシ
  • アマニ油
  • グリーンナッツオイル
  • しそ油

    

☆n-6群の多不飽和脂肪酸(悪玉脂肪酸)

  • オメガ6脂肪酸ともいう。
  1. 癌細胞の成長・転移の促進

オメガ6脂肪酸は以下に含まれる。

  • サラダ油
  • 赤身の多い肉に含まれる。

つまり、オメガ3脂肪酸を適量与えることが重要です。

オメガ6脂肪酸 : オメガ3脂肪酸  の比率を  1 : 3  以上にすることが重要です。

蛋白質と癌細胞(癌細胞は蛋白質がまぁまぁ好き)

  • 炭水化物同様に、癌細胞は好んで蛋白質を利用して成長しようとします。
  • 蛋白質は犬の体に必要な栄養素であり、癌細胞とこれを取り合うことになります。

蛋白質が欠乏すると犬の体力の消耗を招き、蛋白質が過剰になると癌細胞の成長促進となります。つまり・・・過不足のない量の蛋白質を供給することが重要と言えます。生体利用率の高い良質の蛋白質を中等度与えるようにしましょう。

アミノ酸と癌患者(癌患者に有効なアミノ酸)

アルギニン

  • 腫瘍の成長・転移の割合の減少(げっ歯類で証明)
  • 免疫機能亢進
  • 創傷治癒促進

グリシン

  • 抗癌剤による腎臓へのダメージを軽減させる。

シスチン

  • 猫のハインツ小体貧血を減少。

グルタミン

  • 抗癌剤の消化管毒性に有効
  • 放射線治療の粘膜炎に有効
  • 消化管粘膜の保護
  • 免疫機能亢進

つまり・・・上記アミノ酸は癌患者に有効と言えます。

以上のことから、鶏肉、サーモン等の海の魚類は、ガンを発症した場合、与えると良い蛋白質と言えます。ごはんに混ぜたり、おやつを与えたいとき「牛肉のジャーキー」より「鶏肉のジャーキー」や「サーモンで作ったおやつ」を選ぶなど、ちょっと頭の片隅に入れておくと、わんちゃん、猫ちゃんの体には良い効果が期待できます。

処方食の利用

低炭水化物、高脂肪食になっていて、尚、オメガ3脂肪酸やグルタミンや、アルギニン等が加えられている。

  • ヒルズ a/d
  • アイムス 栄養アシスト
  • ロイヤルカナン 退院サポート

ぐすたふの場合

病院の愛犬ぐすたふは「血管肉腫」と診断され、通常余命2~3ヵ月の状態で緊急手術を行いました。術後、抗癌剤を1度した以降は、抗癌剤や免疫抑制剤等の投与はせず、食餌療法とサプリメントで11ヵ月間、私たち家族と一緒に生活することができました。

5月末血管肉腫による脾臓破裂のため緊急手術
6月6日抗癌剤
      ↓

1週間は下痢・嘔吐がほぼ連日
嘔吐が止まり、下痢も少しずつ改善され、食欲が出て来たため、a/d缶を主食として、下記のサプリメントを与えていました。
  • 免疫パックAⅡ(キノコ系の免疫力亢進・抗癌作用有りのサプリメント)
  • イペット(タヒボ)※1
  • イムファン(アルギニン・グルタミンが入っている。)※1
  • ミサトール(抗癌作用有のサプリメント)
  • サーモンオイル(オメガ3脂肪酸を加えるため)

※1…この組み合わせで免疫力亢進と言われている  

ぐすたふは5才くらいから、免疫パックを毎日飲んでいました。通常血管肉腫の手術時、肝臓等への転移がみられることがほとんどですが、ぐすたふの場合、肉眼での転移は認められませんでした。免疫パックのおかげ(?)と思ったりしています。おやつとして、市販のものは与えず、食品乾燥機でカツオやマグロ、サーモン等のおさしみを干したもの、ササミを干したものを与えていました。(海の魚類はオメガ3脂肪酸を含んでいて、蛋白質も適宜とれるため。ササミは犬の嗜好性があり、蛋白質も適宜とれるため。又、赤身の多い肉はオメガ6脂肪酸を多く含むため与えていませんでした。)

市販の物を利用する場合、炭水化物の極力入っていないドライフードを与えるか、もともと炭水化物の量が少ない缶詰や、レトルトタイプの物で、主な材料が牛肉、鹿肉等赤身の肉の物は避けると良いと思います。これらのフード(主食)に市販のアマニ油等をひとまわしかけ入れてあげてもいいと思います。

ぼくとままとの経験が皆んなの役に立てたらうれしいな・・・。
ぐすたふ

ぼくとままとの経験が皆んなの役に立てたらうれしいな・・・